2020-10-10

全盲さいちちゃん vs ファッションデザイナー山本寛斎さんの緑色のおはなし

皆様こんにちは!
アルルネ鍼灸治療サロンでございます。

10月2日(金)、いつものように新宿若松河田の東京女子医大にて、臓器移植手術後の経過観察のための定期検診に行って参りまして、東京女子医大病院に行く度にいつも思い出す数年前のエピソードがあり、なんの気なしにそのエピソードをTwitterでつぶやいたところ、

なんの気なしにつぶやいたツイートが、投稿後数日で、95000イイネ、15000リツイートになっている。
これまで300人くらいだったフォロワー数が、1日で2000人に増えている。

一体何が。

昔東京女子医大で1人で診察待ちしていたら、隣に座っていたおじさんが私の白杖に気付いていたのか、『君のカーディガンの緑色、とても素敵だね。僕も今、黄緑色の帽子とブーツなんだよ。』と話しかけてきて、このおじさんは山本寛斎さんだった。
 全盲とデザイナーとの緑色の思い出。
 本当におやすみなさいね。

というツイートだったのですが、

最後の「本当におやすみなさいね」は、この日東京女子医大で試験管11本分血液を抜かれて疲れ果てた状態で帰宅したもので、深夜に本当の本当に絶対にもうおとなしく寝るんだという、「おやすみなさいね宣言」なので今回の案件には関係ないとして、

このツイートに対して、たくさんの数のご返信と引用リツイートを頂いたのですが、中でも特に多く目についたのが、

*泣けました、感動しました。
*いいエピソードだ。
*素敵なお話ですね。
*自分も寛斎さんのような優しい人になりたい、素敵な人になりたい。

…といった内容のコメント。

どうしましょ、全然そんな感動するお話ではないのです。
なんか、本当にごめんなさい。
実は、皆様が想像するほどそんな、美談ではないんです。
私にとっては珍奇物語でしかなかったのですが、

Twitterは1回の投稿で140文字しか書けないわけですが、本当に大事な主旨だけを切り取って書いたところ、思いの外キレイな文章にまとまってしまったがために、皆様に誤解を与えてしまいました。

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時は今から5~6年前の話です。
私は2014年2月に、脳死ドナー様から膵臓と腎臓を頂き、東京女子医大病院で臓器移植手術を受け、それ以来定期的に東京女子医大病院で移植臓器の経過観察のための検診に通っているわけですが、

この日もいつものように1人で埼玉から東京女子医大病院まで電車で向かい、院内では病院のスタッフさんに、通っている科の受付まで案内して頂き、

スタッフさんとお別れした後、診察を無事に終えて、スタッフさんがまた私を迎えに来てくれるのを待ちながら、受付の前に並んでいるソファに座ってスマホをいじっておりました。

「君のカーディガンの緑色、とても素敵だね。」

という男性の声が、右側から聞こえてきました。

私に話しかけているのか?
確かに、今日私は緑色のカーディガンを着ているし、声の方向は私に刺さってきたし、おそらく私に話しかけているにほぼ間違いなさそう。

さ「私ですか?」

男性「僕も黄緑色の帽子とブーツなんだよ。」

え、何?いきなりこのおじさん、何の話!
怖い!ちょっと、早くスタッフさん迎えに来てよ!

てか、黄緑色の帽子に黄緑色のブーツって、どういう神経してんのよ!

全盲って、いきなり知らない人から脈絡のない話題で話しかけられたら、めちゃんこら恐怖なんです。
いや、全盲じゃなくても知らない人からいきなり脈絡のない話題で話しかけられたら、まず恐怖だと思うのですが。

特に私の場合、1人で電車に乗っていると、隣に座っている人によく話しかけられて、よくよく話を聞いてみると宗教勧誘の事が多く、

… … … … …

隣の席の女性「こんにちは。」

さ「…こんにちは。」

隣の席の女性「私もね、あなたと同じで頑張ってきてね、これから大塚の○○寺に行くんだけど、○○寺って知っていますか?」

さ「…いや~、初めて聞きました。」

隣の席の女性「○○寺はね、○○教のお寺なんです。みなさんね、色々あった人たちが集まるのですが、みんな○○寺に行って幸せになったんですよね。」

さ「へぇ!1つ質問してもよいですか?」

隣の席の女性「もちろん、何でしょう?」

さ「なぜ私に話しかけたのですか?」

隣の席の女性「あなた、とても頑張っているように見えたから。」

さ「私が頑張っていると、なぜ分かるのですか?」

隣の席の女性「私もがんを患っていて不治だとお医者さんに言われていたのですが、○○教の○○寺に通ったところ無事に完治したんです。だからあなたもきっと幸せになれると思ったんです。」

さ「あなたのがんの完治と私の幸せと何の関係があるのですか?」

隣の席の女性「あなたの目もきっと、○○寺に通えばきっと…」

さ「私が目が見えないから幸せじゃないと想像して、それで話しかけたという事ですか?」

隣の席の女性「いえ、決してそういうわけではないです。電車でお隣どうしになったのも、何かのご縁を感じませんか?」

さ「あなたは電車の座席で隣にいた人は全員ご縁を感じて、こうやって隣の人に誰にでも話しかけるのですか?」

隣の席の女性「そういうわけではないですが、あなたには特別何かを感じましたので。」

さ「残念ながら私はあなたに全くご縁を感じませんでしたし、私、脳死ドナーが見つかって臓器移植手術を受けて子供の頃からの病気が完治して、自分の治療院を開業して好きな仕事で食べていく事ができておりまして、幸せか不幸かで言えばだいぶ幸せ側の人間なのですが、なぜ私を見て幸せになってほしいと思ったのですか?」

隣の席の女性「…もう既にお幸せになられているなら、とても安心しました。」

さ「私、企業や学校でも講師をしているのであなたにも1つアドバイスしておきますけど、あなたの話し方じゃ全然営業としてうまくいきませんよ、だって幸せそうな人の話し方じゃないですから。たぶん私の方があなたの信仰されている宗教の勧誘、うまく人を取り込んであげられると思います。もっとお話の仕方をお勉強された方がよいかと思いますよ。」

隣の席の女性「アドバイスありがとうございます。あ、○○寺の最寄り駅になりましたので、これで。」

さ「がーんばってくださいねー!」

↑これは池袋駅から大塚駅までの山手線外回り線の電車の中でのエピソードで、昨年の出来事なんですけども。

このような出来事は外で1人で行動しているとわりと日常茶飯事なので、知らない人に突然話しかけられるとまず、「宗教勧誘」が第一候補に浮かんできて、私は相手に戦闘態勢で臨むのです。

… … … … …

なので、病院の受付前で突然話しかけてきたこの男、私のカーディガンをまず誉めて宗教勧誘に入る気だな、そうはいかないぞ、と思ったら自分の帽子とブーツの自慢を始めるし、こいつ一体どういう奴なんだ?と、頭が混乱したわけです。

で、私が若干怪訝に思っている事はつゆ知らずなのか、彼はさらに私に話しかけてくるんです。

男性「目は少し見えるんですか?」

やだ、全然見えないから、今この場面めっちゃ怖いんだってば。
私の白杖に気付いての、この質問だったと考察されますが、

さ「左目は全く見えませんが、右目は電気がついているか消えているかくらいの明るい暗いってのは分かります。」

男性「それでどうやって、お店で洋服を買うの?」

男性からこの質問が出た時、なぜか分からないけれど、「あれ?このおじさん、単純に好奇心で私に話しかけてきているような気がする。」と感じたのです。
今までの怪訝な気持ちは、おじさんのこの質問により、一瞬にして取り払われました。

帽子とブーツを黄緑色で合わせるって、極端にダサイか極端にオシャレかのどちらかという極論だと設定した私は、後者である事を祈りながら彼と会話を続けてみる事にしたのです。

さ「大学時代までは目が見えていて、大学で服飾デザインの勉強をしていて色の名前も細かく把握できているので、お店では店員さんに商品の色を教えてもらえれば、だいたい頭の中で想像がつくので、頭の中で洋服の組み合わせを想像して選びます。」

おじさん「デザインの勉強をしていたの?」

さ「はい。」

おじさん「好きなデザイナーはいますか?」

…にしてもガンガン来るなぁ、このおじさん!
確かに東京女子医大病院の診察待ち、ロングロンガーロンゲストに待たされ続けるので、おじさんも退屈していたんでしょうけれども、

さ「1番好きなデザイナーは、クリスチャンディオールです。」

おじさん「へぇ~!!なんで?!」

急にテンションが上がって、さっきよりも声が大きくなるおじさん。
まるで面接のような時間が進みます。
しかし、突如テンションが上がったおじさんに私は、「よかった、これは極端にダサイんじゃなくて、極端なオシャレ野郎だわ。」と確信し、安堵したのです。

さ「ディオールの生き方が好きで、学生時代にフランスのディオールの生家にも行った事があって、彼が作ったドレスも生で見たらもう感動して、人が作ったものを一目見て感動して泣いたのが初めてで。」

おじさん「へぇ、ところで山本寛斎は分かる?」

えぇっ、私がディオールについて話を広げようとしてるのに、人の話全然聞いてへんやんけー!
極端なオシャレおじさん(推定)のペースにどんどん巻き込まれていくさいちちゃん…

さ「もちろん分かります。そう言えば、前の職場の会社の会長が、山本寛斎がデザインして自分で住んでいた目白の家を、山本寛斎がその家を出ていった後に買い取って、今住んでいるらしいです。」

極端なオシャレおじさん(推定)「じゃああなたは本当に目が不自由なようだから、お伝えするとね、山本寛斎はね、私なんですね。」

?????

はっ!

オシャレ野郎じゃなくて、オシャレの神様じゃないですか!

緑色の使い手じゃないですか!なるほどそれで、カーディガンの緑色に反応したのか?

極端にダサイでもなく極端にオシャレでもなく、極端なオシャレを作っている方じゃないですか!

さっき「色の名前は細かく把握している」とか、すんげー恥ずかしい事を言ってしまった、あぁ本当に恥ずかしい…

てか、緑色愛好家でよかったー!
この日、黒とかグレーとか白の洋服を着ていたら、きっと話しかけてもらえなかった事でしょう。

いやもしかしたら、私が黒い洋服を着ていたとしたら、それはそれで「君のワンピースの黒、とても素敵だね。」と話しかけられたかもしれないけれども。
だって、普通こんなにガンガン話しかけてきますかね?

ちなみにその日私が着ていたコーディネートがコチラ↓

アニエスb.の緑色のカーディガンとホコモモラの花柄のワンピースの画像

もう今から20年も前、大学に入って京都で初めて買ったのが、このアニエスb.の緑色のカーディガンで、京都駅伊勢丹1Fのアニエスb.で見つけて、「アニエスなのに緑色とは珍しい。」と目を引いて、購入し、もう15年ほど経ってそこそこオンボロなので、そろそろ廃棄するかなと思っていた頃だったのですが、寛斎さんに誉められたおかげで捨てるに至らず、現在も現役活躍中です。
ワンピースは、10年以上前に買ったホコモモラですが、これまたもう現在はそこそこのオンボロ加減。
これにマリメッコのウニッコの赤のそこそこ大きなサイズのバッグを持っていたので、地味なコーディネートではなかったとは思います。

で、どんだけの緑好きかと申しますと、

ホコモモラの緑色のワンピースとカットソーの画像

ホコモモラの10年前のワンピースはだいぶ剥げて、緑色感が薄れています。
ホコモモラの緑色のカットソーは、ホコモモラで買い物し過ぎて、ポイントカードのポイントのみでゲットしました。

ホコモモラとポールスミスのコートの画像

さらにホコモモラのジップアップのコートと、ポールスミスのガチャピン色のトレンチコート。

これでまだ、さいちの緑色ワードローブの一部に過ぎません。

もう買っちゃダメ!と思っているのに、緑色を買ってしまう…
ナチュラルな緑色ではなく、かなり人工的な緑色が好きなんですね。

さてその後、2人でお互いの治療の話に移っていって、やっと病院のスタッフさんが私を迎えに来てくれて、寛斎さんとお別れしました。

その後私は何十回も東京女子医大病院に通っていますが、寛斎さんとお会いしたのは、後にも先にもこの1度だけです。

私の中で山本寛斎さんとは個性的で変わったお人柄というか、クレイジーでぶっ飛んでいていつまでも元気なおじさま、というイメージだったのですが、実際にこんな特殊な話し掛けられ方をされて結果的に今でも、「やっぱり変わったおじさんだな。」という印象を、より強く持つようになりました。

ですので、このブログの序盤でご紹介しましたが、Twitterでの皆様のご反応に対して、私は正直、以下のように思ったわけですね。

*泣けました、感動しました。
 →なぜこのエピソードで泣けたんだろう?あの140文字のどこに感動させる要素があったんだろう?

*いいエピソードだ。
 →いや、私にはただただ珍奇エピソードでしかない。

*素敵なお話ですね。
 →貴重な体験ではあったけれど、素敵とまでは思っていなかったもので、これは実際に寛斎さんのお顔を視力で確認できていれば、もっと緊張感があり、もっと自慢していたのかもしれない。

*自分も寛斎さんのような優しい人になりたい、素敵な人になりたい。
 →いや、優しいとか素敵というよりやっぱり、変わっている人の印象が拭えなかったけど、これがつまり素敵な人という事なのかしら?だけどやっぱり、全盲はいきなり声を掛けられてしかも脈絡のない話題をふっかけられると、ただただ恐怖でしかないので、しかもまず自分に話し掛けてきているのかを判断するまでにものすごく悩む時間を要するので、最初に名乗ってもらうのが私たち全盲は安心するのであって、後から「山本寛斎は私なんですね、じゃじゃじゃ~ん!」って後出しジャンケンみたいな事をされるのは、これは世界的ファッションデザイナーだったからハッピーエンドに終わったけども、これを一般人にされたら、高い確率で迷惑なので、純粋に寛斎さんを見習おうとするのは危険だからやめてほしい。

Twitterでの数々のご反応の中には、

*全盲なのに、どうやって寛斎さんだと思ったのですか?

というご質問もありましたが、「ご本人が名乗られた」が答えです。

このお話はあくまでも、もともとモード知識があって異常に緑色が好きだった全盲の女と緑色を操る魔術師がたまたま出会った、Green Meets
Greenの奇跡の珍奇物語なのです。

だけどどんな形でもよい、隣の席に座っていた私にふと好奇心を抱いて下さった、そんな寛斎さんが私は大好きです。
全盲の私に、色鮮やかな話題で接して下さった、貴重な5分間でした。

私は小学生の頃からファッションデザイナーになるのが夢で大学で服飾デザインの勉強をしていたものの、大学4年生の夏に、子供の頃からの持病の合併症で失明に至り、結局大学を中退する事になり、今は縫い針から鍼に持ち変えて鍼灸マッサージ業務を生業として暮らしていますが、

洋服は人の心をウキウキさせて気持ちを明るく前向きにさせる事ができますが、鍼治療も人の心を明るく晴れやかにする事ができます。
針仕事も、鍼仕事も楽しい事には変わりはなかった。

私は今素晴らしい仕事に就く事ができて、自分の人生に本当に満足している。

病院で寛斎さんとお会いできたのは、何かしらのご褒美のようなもので、神様が私と寛斎さんを引き合わせてくれたのでしょう、

と、思うようにしています。

このエピソードはやはり、私の中では珍奇物語とさせて下さい。
「素敵」とか「感動」という言葉がどうしてもしっくり来ないんです。
「珍奇」や「奇妙」や「おかしな」思い出の方が、きっと寛斎さんも私もこれからもお互いにワクワクしながらこのエピソードを扱っていけるような気がします。

これが、全盲の私と世界的ファッションデザイナー山本寛斎さんとの緑色のおはなしです。

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